飲食店の融資を受ける方法について | 資金の調達方法もご紹介
飲食店を開業するためには資金が必要になります。しかし、多額の開業資金をすべて自己資金で賄うのは現実的に難しいでしょう。
近年ではキャッシュレス決済が普及し、飲食店の資金繰りはますます重要な課題となってきています。
そこで、今回の記事では飲食店が受けられる融資の内容と資金繰りが悪化する原因・対策を解説していきます。
飲食店の開業時の資金調達の方法
まず、開業前に必要資金の総額を確認することが必要です。必要資金の内訳が把握できれば、必要になる自己資金の目安もはっきりします。
一般的に小規模の飲食店であっても開業時には不動産取得費用、設備資金、数か月分の運転資金として、おおよそ1000万円程度必要になるといわれています。
飲食店が受けられる融資にはいくつか種類があり、それぞれ違った特徴を持っているので紹介していきます。
日本政策金融公庫を利用する
日本政策金融公庫は、小規模事業者を支援する金融機関で、株式会社日本政策金融公庫法という法律に基づいて運営される政府系金融機関のひとつです。
融資制度にもいくつか種類があり、無担保・低金利での借り入れが可能となっています。審査・面接が通るためには、事前にしっかりと必要書類を準備しておくことが大切になります。
開業時に利用するものとしては、
・「新創業融資制度」と呼ばれ新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人が無利息・無担保で利用できる制度。 3000万円まで融資を受けることが可能 ・「中小企業経営力強化資金」と呼ばれ、認定経営革新等支援機関との協力関係の下で実施される融資 無担保無保証で融資が受けられ、税理士のフォローや面談に専門家が同席できる制度
などがあります。
金利 | ・基本金利:2.06%~(無担保の場合)
・基準金利:1.11%~(担保を提供する場合) 要件を満たしている場合は、特別料率での借り入れも可能 |
限度額 | ・一般貸付:4,800万円(個人事業主・小規模事業者が対象)
このほか様々な融資制度があり、別枠の貸付も可能 |
返済期間 | ・一般貸付:7年(運転資金の場合)
据置期間を設けている融資制度も多い |
メリット | ・金利が低い
・無担保、無保証での借入も可能 ・経営が悪化した場合の融資制度も設けている |
デメリット | ・審査に時間がかかる
・審査が厳しい |
地方銀行・信用金庫を利用する
メガバンク、地方銀行、ネット銀行それぞれ運転資金の融資が行われています。銀行によっても特徴が異なるため、以下の内容はあくまで参考として見てください。
銀行からの融資
金利 | おおむね1.0~3.0% |
限度額 | 審査状況や銀行によって異なる |
返済期間 | おおむね5~7年 |
メリット | 金利が低い借入実績が企業の信用度につながる場合がある |
デメリット | 審査に時間がかかり、審査自体も厳しいため業績が悪化している場合では審査が通りにくい |
銀行の融資は金利が低いので利用したいと考える人も多いかもしれませんが、審査が厳しいので飲食店の運転資金調達の面で見ると、ハードルが高くなっています。
メガバンクは個人店舗での借入が特に難しく、基本的には信用保証協会の保証付き融資が中心になります。銀行から融資を受けるときの注意点として、自己資金がない人は融資を受けられない可能性があります。
融資を受けた飲食店経営者の自己資金の平均額は309万円となっており、この金額は開業資金全体の約3割を占めています。
開業するためには、計画的に資金をためられる力が経営者として求められるのです。その結果、自己資金がない状況では、開業準備が不足していると判断されやすくなる訳です。
あらかじめ融資を受ける際の前提条件として自己資金の金額を要件として設けていることがあります。条件は金融機関ごとに異なるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
信用金庫からの融資
金利 | おおむね2.0~4.0% |
限度額 | 審査状況や信用金庫によって異なる |
返済期間 | おおむね5~7年 |
メリット | 地域密着型のため、小規模事業者でも比較的借りやすい |
デメリット | ・金利は銀行より高い
・小口融資が中心となるため、希望の融資額に満たない場合がある ・審査に時間がかかる |
信用金庫は、地域の振興と繁栄のために相互扶助で運営されている金融機関です。そのため、営利第一目的のメガバンクとは異なり、小規模事業者や個人事業主にも積極的に融資を行ってくれます。
クラウドファンディングを利用する
クラウドファンディングは、不特定多数の人に対して自分の目標や理想を応援してもらうという形で、資金を援助してもらう調達方法です。
クラウドファンディングには3つの種類があります。
・購入型:サービスを購入してもらう ・寄付型:寄付金を募る ・サービス型:サービスでお返しをする ・投資型:投資をしてもらう
飲食店の場合は、サービス型のクラウドファンディングを取り入れ、開業前に資金を調達し、敬行後にサービスでお返しする方法をとっている店舗が多く見られます。
資金の調達と、開業前の宣伝両方を兼ねてくれるので一石二鳥です。クラウドファンディングは、必ずしも目標金額に達する訳ではありません。
銀行などに必要書類を提出して待つ審査とは異なり、「どれだけ応援したいと思ってもらえるか」がポイントになります。
人の心をつかみ、魅力的なビジネスモデルや理想を伝えることを意識して行っていきましょう。
身内から融資を受ける
飲食店の開業時には、融資のほかに自己資金が必要になります。その自己資金が足りない時などによく利用されているのが、家族や親戚に資金を借りる方法です。
親族からの資金調達は、信用情報機関への登録もなく、返済についても銀行などの金融機関と比べ融通が利くメリットがあります。
個人間の人間関係が大切になるので、お互いに気持ちよく貸し借りができるよう返済義務の有無、利子、返済期間などを書面に残しておくことが大切です。
身近な存在である分、万が一トラブルになった場合は、自分だけでなく親、兄弟を巻き込んでしまう可能性も理解しておきましょう。
飲食店の資金繰りが悪化する原因
資金繰りが悪化するには、いくつか原因があるので紹介していきます。
売上見込みが不明瞭
飲食店で多く見られるのが、想定よりも売り上げが伸びず、資金繰りが苦しくなる状態です。
開店直後などは話題性もあって賑わっていたとしても、その状態がずっと続くとは限りませんし、近くに新しい飲食店がオープンしたことによって、常連客が流れてしまう可能性もあります。
客足が減って来ていると感じたら、何かしらの対策が必要になるので「そのうちまた戻ってくる」「なんとかなるだろう」と放置しないことが重要です。
売り上げを確保していくためには、新規顧客を獲得する、リピート客を維持する2つの取り組みが必要になります。
余分なコストが発生している
飲食店のコストには「FLRコスト」と呼ばれる原価(Food)、人件費(Labor)、家賃(Rent)の3つを合計したものがあります。
それぞれの項目は目安があり、
・原価:30%以内 ・人件費:20〜30% ・家賃:10~20%
とされています。
業態によって比率は変わりますが、3つトータルした金額が70%以内が適正範囲となります。飲食店は、売り上げが少なくなっても家賃、人件費など固定のコストが発生するため、資金繰りが悪化しやすい傾向にあります。
コスト意識をもって経営を行うことが大切です。ただし、闇雲にコストを削ろうとするとサービスの質自体が下がってしまう可能性があるので注意しながら行いましょう。
事業の拡大が成功していない
事業拡大時には、十分な計画を立てる必要があります。しっかりと計画を立てないまま店舗を増やしたり、店舗を移転してしまうと、思ったように売り上げが伸びず資金繰りが苦しくなります。
事業拡大時には、多くの資金を投入する必要があるため、拡大した事業がうまくいかなければ、最悪の場合倒産を余儀なくされます。
事業拡大前のリサーチ、緻密な計画を行い、予測できない事態に備えて返済計画にもゆとりを持たせておくと良いでしょう。
キャッシュフローが正しくない
キャッシュフローとは、お金が出入りする流れのことをいいます。入ってくるお金(キャッシュイン)よりも出ていくお金(キャッシュアウト)が多くなれば、手元に残る資金が減り、経営の悪化につながります。
また、単純にキャッシュアウトが多いだけでなく売り上げはあるが、入金・支払いのタイミングが合わずに資金が不足する「黒字倒産」という状態に陥る場合もあるので注意しましょう。
このような状態を回避するためには、いつ、どれだけのお金が出入りするのか可視化した資金繰り表が必要になります。
お金の流れが目に見えるようになると、資金繰りを悪化させている要因を掴みやすくなるとともに、運転資金が不足する危険な状態を予測することもできます。
運転資金が不足する前の適切なタイミングで資金調達などの対策が取れるようになれば、変動しやすい飲食店の売り上げに毎月左右されることなく安定した経営に繋がるでしょう。
一般的に、月平均した金額×3か月分以上の運転資金を備えておくことが理想とされています。
入出金のタイミング調整
これまでは現金支払いが主流でしたが、近年はキャッシュレス決済の普及が進んでおり、入金のタイミングが1か月先になるなどタイムラグが生じるようになっています。
支払いよりも先に入金があれば問題ありませんが、先に支払いを迎える場合は資金繰りが悪化する原因となります。そのため、入金をできるだけ早くし、支払いはできるだけ遅くすることが必要です。
キャッシュレス決済の中でも、比較的入金サイクルが短いサービスも出てきているので、そういったものを活用するのも大切です。
飲食店の仕入れについて、都度払い・前払いを行っているようであれば、一括後払いもしくは、カード払いに変更してもらうことで支払いのタイミングを遅くすることができます。
取引先と交渉が必要にはなりますが、見直す価値は十分です。
融資に必要な書類とポイント
審査のためには必要となる書類がいくつかあります。金融機関によって書類の内容が多少異なりますが、一般的に必要となる書類について説明していきます。
申し込み時に必要な書類
一般的に、融資の申し込み時に必要となる書類は以下のものです。
・事業計画書 ・資金使途を明記した資料 ・損益計算書:店舗の経営成績(損益)を表す書類 ・貸借対照表:店舗の資産や負債、純資産が表示された書類 ・資金繰り表(キャッシュフロー表):店舗の現金支出をまとめた書類 ・試算表 ・登記簿謄本
事業計画書を書く時のポイント
事業計画書とは、これから始めようとするビジネスの内容、概略、方向性、計画などをまとめた書類のことを言います。
項目 | ポイント |
創業の動機 | 創業の動機としては、自分がなぜ事業を始めようと思ったのか、志や熱意を融資担当者へ伝える |
経歴 | 開業しようとしている事業内容と経験が合っているか |
提供するサービス内容 | 提供する料理の内容、セールスポイント、他の飲食店との差別化など |
雇用の有無 | 従業員やアルバイトを雇うかどうかは雇用創出という条件を満たすかどうかの基準にになる |
現在の借入状況 | 契約者の現在の借入状況
※信用情報機関の閲覧に同意を求められるため、偽ることなく記入する |
必要資金の金額 | 必要な資金の内訳、資金調達の方法や計画内容 |
事業の見通し | 創業した直後からビジネスが軌道に乗った後の利益について記載
見込みなので、全てが現実になるわけではありませんが、理想・妄想に偏らず客観的な視点と根拠をもって記載 |
融資のポイント
根本的に返済能力があると判断されなければ、金融機関から融資を受けることはできません。
融資を申し込む前にしっかりと事業計画書の内容をしっかりと考え、返済が可能であることをアピールしていくことが必要です。
資金の使途、借入の理由、返済計画を明確に示していくことが、審査を通りやすくするためのポイントになります。融資を受ける際には、店舗の収益だけでなく、現預金や借入金、純資産なども判断材料となります。
これまでどんぶり勘定で経営してきたという場合は、今一度経営を見直し、必要書類の準備、質問されたときにスムーズに回答できるよう、準備を進めておきましょう。
また、飲食店関係の景観がどの程度あるのかも重要なポイントとなります。全く経験がない人よりも、飲食店関係の経験がある方が審査においては有利になります。
さらに、過去の支払い状況について税金の滞納の有無、信用情報機関に自己情報の登録がないかどうかも大切な情報になります。
クレジットカードやローンの滞納があったり、過去の債務整理からあまり時間が経過していない場合は審査を通過するのが困難な可能性が高いです。
融資以外に資金繰りを改善させる方法
飲食店の資金繰りを改善するためには、融資を受ける以外にも方法があります。
実際に効果的な方法を見ていきましょう。
助成金や補助金を活用する
国や地方自治体が実施している助成金・補助金を受けるという選択もあります。
助成金や補助金を受ける最大のメリットは、返済する必要がないことです。そのため、助成を受ける要件を満たしている場合は積極的に活用することをおすすめします。
返済の必要がない反面、助成金や補助金は受け取れる金額自体が少ないので、必要な資金をすべて調達することは難しいというデメリットがあります。
受給するまでに時間がかかるものもあるので、確認が必要です。
借入金の返済計画を見直す
金融機関から受けた融資の返済によって資金繰りが悪化している場合は、返済計画の見直しが必要になります。
金融機関と現状を踏まえた無理のない返済計画について交渉し、資金繰りを改善できるようにしていきます。
ただし、リスケジュールを行った場合は新たな融資が受けにくくなるデメリットがあるので注意しましょう。
ファクタリングを行う
ファクタリングとは、売掛債権を売却することで本来の入金予定日よりも早く現金化する仕組みのことです。
手数料が発生するので、受け取れる金額は少なくなりますが、すぐに資金が必要な場合には有効な手段です。
まとめ
飲食店の開業時の資金調達の際は、ある程度自己資金がなければ融資を受けられない可能性もあるので、計画的に資金の準備を進めておくことが必要です。
開業に限らず、資金繰りのために融資を受けるか検討している場合は、返済によって経営が圧迫されないよう返済が不要な助成金・補助金の活用するなど、少しでも負担を減らせる方法がないか意識して情報を集めていくことが大切です。
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