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飲食店の原価率は30%以下じゃないと儲からない? | 業態別の原価率の相場と抑える手段を紹介

「飲食店を経営していく上で、原価率の目安が知りたい」

「原価率を抑えるために何ができるだろう」

といった悩みをお持ちではありませんか。

 

飲食店の利益をあげるためには、原価を抑えることが必要になります。

 

ただし、それぞれの業態に合わせた原価・人件費・経費などの特徴を知ってから対策を行わなければ、サービスや商品の質を下げてしまうリスクもあります。

 

今回の記事では、業態ごとの原価率の特徴や原価を抑える方法について紹介していきます。

飲食店における原価率の考え方

 

まずは原価率の計算方法や考え方について確認していきましょう。

原価率の計算方法・目安

飲食店における原価は食材やドリンク費のことを指し、原価率の計算は下記のように行います。

原価率の計算方法

原価率=売上げ原価÷売上高✕100

試しに計算してみましょう。

 

800円のラーメンの原価が240円であり、20食売り上げたとします。

 

・売上げ原価=240円✕20食=4,800円

・売上高=800円✕20食=16,000円

・原価率=4,800円÷16,000円✕100=30%

 

原価率は30%と計算されます。

 

一般的に飲食店の原価率の目安は30%とされています。その理由については、次のように経費や利益の割合を考えているからです。

種類 割合
原価率 30%
人件費 30%
家賃 10%
水道光熱費 8%
その他の経費

(通信費、消耗品費、広告宣伝費など)

12%
利益 10%

見落としがちな歩留まりの割合についても抑える

歩留まりとは、仕入れた食材のうち実際に使用できる部分のことを言います。

 

仕入れた食材には、野菜の使わない歯の部分や肉や魚の骨・筋などが含まれています。

 

歩留まりを考慮しないと、原価率が上がってしまいます。

歩留まりの計算

1kgで8,000円のお肉を仕入れたとします。2%が骨や筋で廃棄が必要な部分だとすると、正しい原価は980g=8,000円となります。

FLコスト(原価+人件費)のコストも重要

飲食店の経営ではFLコストについて考える必要があります。

 

計算方法やFLコストからどのような見直しが必要になるのかご紹介します。

FLコストについて

FLコストとは食材費(FOOD:フードコスト)と人件費(LABOR:レイバーコスト)の2つを合わせたものをいいます。

 

FLコストの目標は55~60%と言われており、もし60%を超えていれば早急に見直しが必要な状態です。

FLコストからメニューを見直す

飲食店のメニューで一般的に原価が安いのはドリンクメニューです。

 

業態によってドリンクメニューの種類に差はありますが、フードとドリンクのセットメニューを展開するなどうまく取り入れると、利益を上げることができます。

 

原価率はメニューによっても異なります。提供している全てのメニューで原価率を30%以内に納めようとすると、今まで通りの品質を維持できなくなってしまうリスクがあります。

 

お店の看板メニューへのこだわりは大切にしつつ、他のメニューとのバランスをとることで全体の原価率を30%以内に納めることを目標にしましょう。

バランスのとれたメニュー構成

まず、お店で提供しているメニューごとの売上高・売上げ原価・原価率を計算してみましょう。

 

たとえばラーメン(800円)、炒飯(600円)、ソフトドリンク(200円)で提供していたとします。

 

原価はそれぞれ240円、300円、20円として、10食、20食、25杯売り上げたとします。

売上高

ラーメン800円✕10食=8,000円

炒飯600円✕20食=12,000円

ソフトドリンク200円✕25杯=5,000円

合計 25,000円

売上原価

ラーメン240円✕10食=2,400円

炒飯300円✕20食=6,000円

ソフトドリンク20円✕25杯=500円

原価率

ラーメン2,400円÷8,000円✕100=30%

炒飯6,000円÷12,000円✕100=50%

ソフトドリンク500円÷5,000円✕100=10%

売上げ構成比率

ラーメン8,000円÷25,000円✕100=32%

炒飯12,000円÷25,000円✕100=48%

ソフトドリンク5,000円÷25,000円✕100=20%

 

ここから原価率に売上げ構成比を掛けて全て足すことで、トータルの原価率を出していきます。

 

ラーメン(30%✕32%)+炒飯(50%✕48%)+ソフトドリンク(10%✕20%)

=(0.096+0.24+0.02)✕100

=35.6%

 

トータルしてみると、炒飯の原価率が50%であってもお店全体の原価率は35.6%となります。

 

原価率は高くてもこだわるメニューと、利益が出るメニューをうまく組み合わせることが大切です。利益が出るメニューがよく売れるほど、原価率が下がってお店の利益につながります。

原価率の低い業態はどこ?平均はどれくらい?

 

原価率のポイントが分かったところで、各業態の原価率の特徴を紹介していきます。

居酒屋

居酒屋では食事とお酒を一緒に提供し、接客にも迅速に対応する必要があるので、こちらも他の業態と比べて人件費率が高い傾向にあります。

 

ドリンクの比率は高めですが、ビールの原価率は40%、お刺身も50%と原価率が高めなメニューも多いようです。

 

アルコールドリンクの中でも人気が高いサワーなどの炭酸は、1杯の原価が30~50円と安価で原価率を10%程度に抑えることができます。

 

オリジナルサワーを充実させると、利益を出しやすくなるでしょう。

カフェ・喫茶店

カフェや喫茶店ではそこで過ごす時間やサービスにも高いクオリティが求められるため、スタッフの人数もそれなりに必要になり、人件費は他の業態と比べると高くなる傾向があります。

 

フードドリンク比率の目安としては、フード15%、ドリンク85%と言われています。

 

ドリンク比率が高いほど利益が出やすく、特に主力のコーヒーは種類によって多少の差はありますが、原価率10%の利益に繋がるメニューです。

ラーメン

ラーメン屋はカウンターを中心にした小さな店舗でも営業ができるため、個人の飲食店として開業の難易度が低く、人件費も抑えやすい傾向にあります。

 

ラーメン屋の原価率は一般的に30%前後と言われています。1杯あたり麺は50円前後、スープはお店のこだわりによって原価が変わります。味噌>とんこつ>醤油の順で原価がかかるとされています。

 

トッピングは煮卵が1個10円、チャーシューは1枚25円以上かかり、お肉にもこだわるとさらに原価は上昇していきます。

 

ラーメン屋ではフード・ドリンク費が低めですが、客層やお店の回転率を考慮しながらアルコールやソフトドリンクをメニューに取り入れていく方法もあります。

バー

バーの原価率の目安は20〜30%程度です。原価率を抑えて利益を上げるためには、ドリンクが売れるような仕組みを作ることが大切です。

 

お酒は種類やサワーなどの飲み方によっても原価が変動するので、原価を抑えて提供できるサワーなどのメニューを充実させるのも1つの方法でしょう。

 

また最近だと、『原価バー』という入店時に入店料をいただき、料理・お酒は原価で提供するシステムで利益を確保する業態が収益を上げて人気になっています。

デリバリー専門

UberEATSや出前館などに登録せず、自社配送を行う場合の原価率は約35%となっており、内訳としては、食材費27%+梱包材8%です。

 

デリバリーでは、器やフォークなど梱包材にコストがかかるので、単価の安い物を選びがちです。

 

しかし、梱包の見た目に高級感があるなど魅力的な物はリピート率が高い傾向にあります。

 

料理を持ち帰ってから容器を開けて料理を楽しむのがデリバリーですから、お店のコンセプトに合わせたこだわりの容器を検討しましょう。

 

さりげなく自社のサービスをアピールするには消耗品などに店名・ロゴを入れておくこともひとつのアイディアです。その際には、こちらの『パックマーケット』が便利です。

飲食店におけるドリンクの原価率はどれくらい?

 

飲食店の原価率が高い場合、原価率が低いアルコール類のメニューを強化すると良いとされています。ドリンクメニューは食品に比べて消費期限が長くロスが発生しにくい特徴があります。

 

1杯あたりのドリンクの原価の目安は以下の通りです。

種類 原価率
ワイン 30~50%
日本酒 30~50%
焼酎(ロック) 25~40%
生ビール(中ジョッキ) 30%
テキーラ 10~20%
カクテル 16%
サワー(中ジョッキ) 10%
ハイボール(中ジョッキ) 10%
ソフトドリンク 10%
ウーロンハイ 8%
コーヒー 6%

 

アルコール類の中でも、ビール、日本酒、ワインは原価率が高くなっていますが、全体をトータルすると25%前後になります。原価率の低いドリンクメニューを充実させることがポイントです。

原価率が低く粗利が出しやすいメニュー

 

原価を抑えた利益率の高いメニューを考案できれば良いのですが、簡単なことではありません。

 

今あるメニューにちょっとした一手間を加えるだけでも、利益の大きいメニューに生まれ変わるかもしれません

 

・器を本格的な材質に変えて、高級感や本格的な雰囲気を楽しんでもらうメニューとして売り出す

・砂糖を溶かした飴細工をサラダやデザートに乗せて、見栄えするメニューにする

・利益率の高いドリンクとセットメニューを展開する

・メニュー表の書き方やPOPを改良して、利益率の高いメニューに注文が集まるように工夫する

原価率を抑えるには

 

飲食店を経営していく上で、原価率を抑えることは避けられない課題です。日頃からコスト意識を持って、無駄をなくせるよう工夫していくことが大切です。

在庫管理の見直し、飲食店の棚卸

在庫管理が上手くいくと、ロスとして廃棄する食材を減らすことができます。

 

棚卸しでは以下の項目を分かるようにしておきます。

 

・管理番号、食材の名前

・仕入れ価格

・在庫数

・消費期限

 

定期的な棚卸しを行い、現状でどの食材がどれだけストックされているのか把握することが大切です。

 

また、棚卸しによって人気メニューとそうでないものをはっきりさせることができます。

業務効率化を図る

毎日の仕込み、営業、片付けを行いながら棚卸しをするのは大変です。

 

そんな悩みを解決してくれるのが、POSレジです。正確に会計するとともに自動で在庫管理ができるようになります。

 

膨大な労力をかけることなく食材の在庫を可視化することで、ロスを減らせるほか、お店のマネジメントにかける時間を増やすことが可能になります。

食材の廃棄ロス削減

飲食店で美味しい料理やドリンクを提供するために、食材の仕入れは欠かせません。

 

しかし、食材の種類によっては日持ちしにくいものや回転率が良くないものもあるでしょう。ロスが増えるほど原価率も上がってしまうので、食材の無駄をなくせる工夫が必要です。

 

回転率の悪い食材は他のメニューでも同じ食材を活用できるように、メニューの見直しを行うと良いでしょう。

 

イベントや行事など利用客や売上げの分析を活かした仕入れを行い、無駄な食材の仕入れを減らすことも検討していきます。

 

盛り付けについても、量を明確に決めてオーバーポーションと呼ばれる盛りすぎにならないよう注意していきます。

まとめ

 

ここまで飲食店の原価率の考え方や目安、原価率を抑える方法について説明しました。

 

飲食店の経営を成功させるためには、経営方針や人件費、食材費などのコストについても日々向き合っていく必要があります。

 

しかし、1人で全てをこなすのは物理的にも難しいところです。自動化できるところはシステムを導入し、業務の効率化を図ることでより良いメニューやサービスの開発にあてる時間を確保していきましょう。