飲食店のマーケティング・集客はこれをやろう! | 有名企業の成功事例と押さえるべきポイントを紹介
飲食業界は競争率が高い市場であるため、どのようにお客さんを取り込んでいくかは重要な課題になります。
飲食店を始めるにあたり「どのようにお客さんを集めたらいいのか分からない」「ネットで集客方法が知りたい」といった疑問やお悩みをお持ちではありませんか。
今回の記事では、飲食店のマーケティングを理解し、ネットを使った集客方法を活用するために必要な情報をお伝えしていきます。
飲食店におけるマーケティングとは
マーケティングとは、総合的な視点からお客さんのニーズを把握し、サービスを提供することで利益を得る活動のことを言います。
売れるための仕組み作りと捉えることもできます。集客とマーケティングを混同している方もいるかもしれませんが、「集客」はマーケティングのひとつとしての位置付けです。
マーケティングに取り組むべき理由
どれだけ素晴らしい料理・サービスを提供していても、お客さんがその飲食店のことを知らなければ来店にはつながりません。
お客さんの思考を変えて、来店につなげるためにマーケティングが必要になります。
誰に伝えるのか、お客さんの心理に寄り添っているかプロモーションを適切に行うことで、来店につなげていくのです。
出店している地域で有名になろう
飲食店を繁盛店へと進化させるためには、地域の特性に合わせた経営戦略(エリアマーケティング)を行う必要があります。
その地域に住む人とその特徴を知ることで、提供する料理やサービスをニーズに合わせ、効率的な集客を図っていきます。
方法は以下の通りです。
商圏距離を決めていく
お客さんが店舗に足を運んでくれそうな距離のことです。
交通アクセスなどを踏まえて検討する必要がありますが、市街地は半径500m、郊外は半径5kmとするケースもあります。
地域の情報収集
商圏距離を決めたら、そのエリアでどのような人たちが活動しているのか調べます。
「e-Start 政府統計の総合窓口」で提供している「地図で見る統計(j STAT MAP)」を使うと地域の情報収集ができます。
具体的には、下記のような情報をグラフや表から知ることができます。
・世帯総数 ・年代別の人口 ・男女別の人口 ・従業者数 ・人口、世帯数増減 ・人口密度
これらの他にマーケティングでは以下の項目についても調査が必要とされています。
・市場規模 ・需要特性 ・価値観 ・歴史 ・風土 ・情報伝達速度
戦略の立案
ターゲット層に合わせてメニュー作りやコンセプト、内装など集めた情報から、その地域にどのようなニーズがあるのか戦略を練っていきます。
具体的には以下の内容が挙げられます。
・学生が多い:学割 ・女性が多い:写真映えする料理や内装 ・ペットを飼っている人が多い:ペット同伴を許可する
戦略をもとに集客
ターゲット層に向けて、店舗のことを知ってもらうための集客を行います。
地域住民へ情報を発信するときには、チラシの配布が効果的です。配布方法としては、ポスティング・新聞折込・DM委託などがあります。
結果を確認・分析する
調査・戦略を実行した後は、結果を確認するのがマーケティングです。
たとえ結果がマイナスであっても、それを分析することで今後の経営に役立てることができます。
折込チラシに当日限り有効なクーポンを付けてアピールした場合、そこからどれだけの人が足を運んでくれたのか確認します。
回収できた枚数が多いほどニーズと合致していたと判断することができるのです。
マーケティングのやり方・ポイント
マーケティングを成功させるためには、お客さんのニーズをしっかりと汲み取ることが必要です。
消費者心理を理解して集客を行う
一般的な消費者心理として利用されているのが『AISAS(アイサス)』と呼ばれる電通が提唱した消費者プロセスです。
言葉 | 意味 |
Attention | お客さんが商品やサービスの内容を知る |
Interet | 対象となる商品やサービスに興味を持つ |
Search | 商品やサービスについて検索する |
Action | 商品もしくはサービスを実際に購入する |
Share | お客さんが商品やサービスについて周囲に知らせる |
インターネットを活用してお客さんが検索したときに、対象の飲食店が検索にかからなければ実際の購入や来店にはつながりません。
反対に、検索時にヒットする、利用客にSNSで周知してもらうことができれば、新たなお客さんの来店が期待できるのです。
このことから、Search・Shereが大切であることがわかります。
集客の対象は4種類に分けることができます。
1. 未認知顧客:当該飲食店のサービスをまだ認知していない 2. 認知顧客:すでに当該飲食店のサービスを認知しているが、関心は持っていない。 3. 見込み顧客:当該飲食店のサービスの利用を検討中 4. 「休眠顧客」利用履歴はあるが、リピーターになっていない
新聞や雑誌などの紙媒体、テレビCM、SNSやウェブ広告、対面での営業など、集客を行う方法についてもターゲットを定めて選択していく必要があります。
近年は、新型コロナウイルス感染症の流行による外出自粛やリモートワークの普及によってデリバリーやテイクアウトを活用して自宅で料理を楽しむ機会が増えました。
今後も、働き方の変化、ライフスタイルの多様化によって外食をしての飲み会は減少する可能性があります。
このような、消費者スタイルの変化や社会情勢に合わせた集客を行う意識が大切になります。
マーケティング手法を理解して行う
マーケティングにはいくつかの手法があることを知っておきましょう。
ここではSTP分析について説明していきます。
言葉 | 意味 |
Segmentation
(セグメンテーション) |
市場細分化のことを言います。
年齢や性別などさまざま指標を使って市場を分類していきます。 |
Targeting
(ターゲティング) |
セグメンテーションで分類した市場の中から、自社がターゲットとする市場を絞り込むことです。
・無差別マーケティング:市場間の違いを気にしない ・差別化マーケティング:ターゲットとする複数の市場に適したサービスを提供する ・集中型マーケティング:特定の市場のみに特化していく |
Positioning
(ポジショニング) |
ターゲットとしたセグメントの中で、自社と競合するサービスをチェックして自社の提供するサービスの位置付けを行います。 |
飲食店のことを知ってもらう
多数ある飲食店の中から自社を選んでもらうためには、まずどんなお店か分かる・お客さんの目を惹くことが必要です。
『ショルダーネーム』という肩書きを使うと、屋号だけでは伝えられないお店の内容を看板などからお客さんが知ることができます。
「みずほ」の店名だけではどんなお店か分かりませんが、「和食居酒屋 みずほ」とショルダーネームを付けることでお店の内容がグッと伝わるようになります。
飲食業は競争率が高い業界なので、日頃から他店と自社との比較意識を持つ(『ベンチマーク』)ことが大切です。
ベンチマークには「指標・基準」といった意味があり、他店の口コミや評判を聞くことで自社の改善につなげていきます。
自社のことを知ってもらうために、販促手段を考えていきます。ターゲットとする顧客層、提供するサービス内容、お客さんのどのようなイメージを持ってもらうかなどコンセプトを明確にして行います。
販促手段を考えるときには、新規顧客獲得を目的とするかリピーターの増加を目的とするかによって方法が変わってきます。
・新規顧客獲得:SNSやグルメサイトに自社のサービスを掲載し、幅広い人に認知してもらう ・リピーター増加:DMなどで個別に案内を送付し、再度来店を促す
集客・マーケティング手段9選
マス広告を活用した集客
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などのマスメディアを活用した広告のことです。
費用はそれなりにかかりますが、多くの人にアプローチすることができます。地方テレビやラジオ番組で店舗を盛り上げてもらうことも有効な手段です。
チラシを活用した集客
アナログな方法ですが、店舗周辺の住宅へお店を紹介するチラシを投函します。
費用と手間がかかるデメリットもありますが、来店してもらえる可能性が高い近隣住民に店舗の存在を確実にアピールできるのは強みです。
SNSを活用した集客
SNSの最大の魅力は、拡散性が高く潜在顧客の獲得の可能性に繋がるところです。
Instagram、Twitter、Facebook、LINE、TikTokなどのSNS上の情報は、パーソナライズ化され、ユーザーが興味のある情報が表示されやすくなっています。
既存客との近い特性を持った潜在顧客へのアピールが可能になります。ただし、炎上させるような投稿は集客とは逆効果になってしまうため注意して行う必要があります。
ウェブ広告や自社のホームページを活用した集客
SNSと同様にネット上へ広告を掲載することによって、潜在顧客へアピールすることができます。
地域を絞って効果的に宣伝ができるところもおすすめです。主な方法としては、グルメサイトへの掲載です。
グルメサイトの月額固定掲載量を支払うと、金額に応じてサイト内で上位に表示されるなど、さまざまなプランがあるようです。
グルメサイト以外では、Googleのウェブ広告やグルメ系メディアへの広告出稿といった方法で宣伝することが可能です。
新聞・雑誌・ラジオなどの広告も決して集客効果がないわけではありません。新聞の折り込み広告やポスティングは高齢者へのアピールに有効です。
テレビCMも話題性が十分であり、ターゲットに合わせてデジタル・アナログどちらかに偏りすぎない宣伝方法を考えます。
宣伝方法を決めたら、次はターゲットとする範囲を決めます。周知したい範囲を広げすぎても効果がありません。飲食店周辺のエリアで販促費を抑えながら効果的に集客できるようにします。
MEOを活用した集客
MEOとは、検索ブラウザに地域名を入れて飲食店を検索した場合に、検索上位にGoogle Mapとその地域の飲食店が表示されるようになっており、この地図上に店舗の情報を表示させるための対策のことです。
一部有料で制限されているサービスもありますが、基本的には無料で利用可能です。登録すると、マップ上で住所・営業時間・電話番号・メニュー・写真イメージを掲載することができます。
マップサービスの代表的なものは以下の4種類です。
・Google Map ・Yahoo!ロコ ・appleマップ ・飲食店に特化したマップアプリ
イベントを開催し集客を図る
新規顧客層の獲得には、イベントの開催が有効です。SNSでイベント開催を幅広く宣伝するのがおすすめです。
集客に適したイベントの企画が難しい場合は、話題性のある人物や企業とのコラボも有効です。
地域で集客を図るときには、飲食店の枠組みにこだわらず、近隣の店舗と協力し、一方のレシートを持っている場合に割引を行うなどの方法も有効です。
キャンペーンやイベントで一時的に集客しただけで終わらせないように、SNSフォローの割引の条件にするなど中長期的な視点をもって、新規顧客をリピーターへつなげていきます。
キャッシュレス決済を積極的に導入する
キャッシュレス決済を日常的に利用する人は増加傾向にあります。
普段からキャッシュレス決済を行っている人は、その方法が使えるかどうかで店舗を選んでいる場合もあります。
今後もキャッシュレス決済のニーズは高まっていくので、積極的に導入していく必要があります。
主な決済方法は以下の4種類です。
・クレジットカード ・デビットカード ・電子マネー ・QRコード決済
感染症対策への取り組み
ここ数年私たちの生活に影響を与えているのが新型コロナウイルス感染症です。
外食を楽しみたいと思っていても、感染リスクを懸念し飲食店の利用を控えている方も少なくありません。
徹底した感染対策への取り組みをアピールし、安心して利用できる環境を作っていきましょう。
デリバリーやテイクアウトに対応する
新型コロナウイルス感染症に伴う在宅ワークの増加、デリバリーサービスの充実が進んでいます。
感染症対策に取り組んでいても、家でゆっくり食事を楽しみたいと考えるお客さんもいます。
そのようなニーズに対応するためデリバリーやテイクアウトへの対応も積極的に考えていく必要があります。
リピーターになってもらう方法(ロイヤルマーケティング)
既存のお客さんの満足度を高めることに力を注ぎ、リピーターとして長期的な関係を築いていくことを目指します。
売上や利益に貢献してくれるお客さんを差別化し、貢献度が高い「優良顧客」と優遇して、より多くのサービスや特典が受けられるようにしていきます。
新規顧客の獲得は、既存のお客さんを維持するより5倍のコストがかかると言われ、既存客が離れていく割合を5%改善できると、利益率は25%改善されるとされています。
マイレージ(ポイント)カード
利用した金額によってマイレージ(ポイント)が貯まり、ランクが上がることでもらえる特典が強化されていきます。
お店の貢献度合いに応じた優待特典を行うだけでなく、ランク区分やユーザーランキングといったゲーム性を取り入れると、来店意欲を高めリピーターの獲得につながります。
初めから優待の多いシニアカードを導入することで客層の幅を広げたり、アプリにチャージ機能を連携させることでアプリ削除のリスクを減らし、お客さんを逃さない仕組みを作ることも可能です。
スモール・サプライズ
ちょっとしたサプライズで良いので「思いがけず嬉しい」と感じてもらえるようなサービスの提供を行っていきましょう。
来店時にプラスの印象を与えることができ、お店に好意を持つことで再来店が期待できます。
単純接触効果を与える
人は接触を重ねるうちに、相手への好意度や印象が高まっていく性質を持っています。この性質を利用してお客さんとの距離を意図的に縮めていきます。
1人のお客さんと長時間話すのではなく、1分で良いので何度か話しかけて接触を繰り返していくことで、親近感が高まりやすくなります。
SNSでも単純接触効果を活用し、店舗の情報を毎日発信することでSNSで繋がっているお客さんと接触回数を重ねることができます。
飲食店(有名企業)で成功している集客方法の事例
いくつか実際に企業で行われている集客方法を紹介していきます。
吉野家のプロモーション
マーケティングを4つのステップで実践することで集客を図ります。
1. Why:なぜ経営しているのか明確にする 2. Who:誰に向けて訴求しているのか考え、企画立案・商品開発を行う 3. 受け手の心に響き、思わず誰かに伝えたくなるようなストーリーとともに情報発信を行う 4. 統計データ分析とお客さんのリアルなコミュニケーションの両方から課題を探り、トライ&エラーで課題を改善していく
企業や店舗の存在意義(パーパス)を美味しさ、サービス、立地、オーナーの考え方などから掘り下げていくことで企業理念や姿勢を明確にしていきます。
そこから、メニュー開発や集客イベントに結びつけていくことで、店のイメージやターゲットの価値観に合ったサービスが提供できます。
かっぱ寿司のプロモーション
LINE公式アカウントを作成し、集客を図っています。
公式アカウントでは、企業がメルマガやブログのように使用でき、オプション設定によりターゲットを絞った配信にも対応しています。
土日に利用する家族連れが多い傾向にあるため、土日限定クーポンを配信することで集客効果をあげています。
居酒屋一休のプロモーション
顧客層へ再来店を促すメルマガ配信と、新規顧客への来店を促すSNSを使い分けて集客を図っています。
メルマガへ登録するとメニューには載っていない料理のクーポンが配信されることで、特別感を出してリピートにつなげています。
マーケティングを勉強するためにオススメの本
初心者向けの分かりやすい入門書
『マンガでわかるWebマーケティング』
本文・マンガ原案・全体監修:村上佳代 マンガ・作画:ソウ シナリオ:星井博文 出版社:インプレス
Webマーケティングの本質を実話をベースにした成功例と失敗事例で紹介しています。
漫画とストーリーに沿って解説されているので、楽しみながらマーケティングを学ぶことができます。Webだけでない事業活動に必要なマーケティングの基礎が分かります。
『世界一わかりやすいマーケティングの教科書』
著者:宮永博史 出版社:KADOKAWA/中経出版
マーケティングになぜコミュニケーションが必要なのか基本から学ぶことができます。専門用語についても丁寧に説明されているので、初心者にもおすすめです。
『僕らはSNSでモノを買う―SNSマーケティングの「新法則」』
著者:飯髙悠太 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
「UGC」、「ULSSAS」といったSNSマーケティングの新法則を解説しています。SNS時代にどのように情報を発信すると効果的なのか丁寧に解説してくれます。
実践的な内容が盛り込まれた中級者向けのマーケティングに関する本
『事例で学ぶBtoBマーケティングの戦略と実践』
著者:栗原康太 出版社:スバル舎
BtoBマーケティングに特化した内容が事例を基に解説されています。
Webを使ったインバウンドマーケティングの理解を深めるため、豊富な図解やケーススタディが掲載されています。
『実践 顧客起点マーケティング』
著者:西口一希 出版社:翔泳社
マーケティングの原点とも言える、1人の顧客のことを深く知るところに立ち返らせてくれる一冊です。
顧客が何を考え、求めているのか理解するマーケティングを導き出してくれます。マーケティングへの理解があり、さらに深く思考・実践したい上級者向けの本を紹介していきます。
『確率思考の戦略論』
著者:森岡毅、今西聖貴 出版社:KADOKAWA
市場構造や消費者の本質を理解することで、八方塞がりに思える状況でも勝つチャンスを見出す戦い方を教えてくれる、数学マーケティングについて説明されています。
『クリエイティブなマーケティング―パーパスを起点に新しい顧客体験をつくるPJMメソッド』
著者:藤平達之 出版社:現代書林
消費者が本当に求めているものは何か見抜き、企業の存在意義(パーパス)を掲げることが重要とされています。実践的なパーパスについて学べる一冊です。
まとめ
飲食店と言っても、近年はデリバリーサービスの普及やおうち時間の増加などによって、消費者のニーズも多様になっています。
集客力を上げるためには、日頃から社会情勢、お客さんのニーズを考えたマーケティングを行う力が必要になります。
飲食店のコンセプトや客層に合わせてSNSを活用するなど、今回の記事を参考に戦略的なマーケティングにつなげていただけると幸いです。
最後に、デリバリーを考えていたりさりげなく自社のサービスをアピールするためには、消耗品などに店名・ロゴを入れておくこともひとつのアイデアです。その際には、こちらの『パックマーケット』が便利です。