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飲食店ができるSDGsは? | 有名企業を例に”明日からでもできる”取り組みを紹介

SDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉を耳にする機会が増えましたが、「SDGsがどんなものか」「飲食店にSDGsが関係あるの?」と思っていませんか?

 

今回の記事では、飲食店ができるSDGsの取り組みについて例を挙げながら紹介していくので、是非参考にしてみてください。

有名飲食店(チェーン店)が取り組んでいるSDGsの紹介

 

実際の有名飲食店において、どのような取り組みが行われているのか紹介していきます。

 

個人経営の飲食店でも明日から取り入れられる内容もあるはずです。

マクドナルド

・働きがいを得られる職場を目指し、年齢や性別を問わずどんな人でも強みを生かしてイキイキと働ける環境を作りを積極的に推進

・ハッピーセットに付属しているおもちゃを回収して、店舗の食品トレーなどに再利用

・植物由来の素材を使ったレジ袋を使用

・配送スケジュールや納品大系などの物流システムを見直し、二酸化炭素の排出量を削減

・フィッシュフィレオに使用される白身魚はMSC認証を取得したスケトウダラを使用

・コーヒーにもレインフォレスト・アライアンスという特別な認証を受けているコーヒー豆を使用

デニーズ

・店舗で出るコーヒー豆のカスを廃棄せず、工場で飼料化し活用

  この飼料を使って生育された牛からとれる牛乳をホワイトソースへ加工して、再度デニーズのドリアなどでお客さんへ提供する循環システムを構築する

・省エネ・節水などの基本的な環境対策に加えて、食材の運搬・フードロス削減などの取り組みが評価され、飲食店として初めてエコマーク認定を取得

・照明をLEDに切り替え、新店舗には積極的に太陽光パネルを設置

・ドリンクバーコーナーのプラスチック製ストローの設置を中止、テイクアウトに使用するレジ袋をバイオマス素材のものに変更し、プラスチック消費量を削減

スターバックスコーヒー

・店舗で使用している電力を100%再生可能エネルギーへ切り替える取り組み

 太陽光や水力発電による電力へ切り替えを行い、現在は約2割の店舗まで普及している

・閉店時間が近づき、廃棄が見込まれる商品は20%オフで販売することでフードロスを削減

・売上げの一部をこども食堂、の普及に取り組む認定NPO法人へ支援している

・コーヒー豆のカスを堆肥椰飼料へ活用し野菜や牛乳の生産する循環システムの構築

・スターバックスでは多くの商品にミルクを使用しているため、年間約1000トンのミルクパックが消費される

 それらは、トイレットペーパーやペーパーナプキン、スターバックス キャンパスリングノートの表紙と裏表紙に再利用されている

・ペーパーカップには国際的な森林認証制度の「FSC(R)認証」を受けた紙を使用

 紙カップの消費を抑えるため、タンブラー利用での割引サービスを実施

モスバーガー

・牛肉の生産には水や飼料などたくさんのエネルギーを消費するため、環境への負担が大きい

 大豆を主原料としたソイパテを使ったグリーンバーガーを開発

・「食のダイバーシティ」と言われ、食の世界でも多様な価値観が広がっている

 人種や信仰、国籍など様々な価値観に対応するためにも、ソイパテは役立つでしょう

ファミリーマート

・店頭で提供していたプラスチックスプーンの持ち手に穴を開けたデザインに切り替え、プラスチック使用量を削減

・「ファミマフードドライブ」の取り組みで、家庭で余った食品を持参すると必要な人に届く仕組み作りを行っている

 (賞味期限まで2ヶ月以上、常温保存可能、未開封食品であることが条件)

・店舗のイートインスペースを使って「ファミマ子ども食堂」を開催し、安い価格で食事を提供

・社内規定を変更し、同性パートナーも配偶者として認め福利厚生を提供している

くら寿司

・海洋問題とその解決策を考えるための出張授業の開催

・小学校の新学習指導要領にある持続可能な開発のための教育(ESD)」に合わせた内容で、模型や映像を使って海の生き物や漁業について学べるほか、回転寿司の体験を通してフードロスや海洋問題の解決策を考えることができる

ネスレ日本

・回収した紙製の詰め替え容器と直営カフェで出たコーヒー豆のカスを使って衣類を製作する

・「ネスレカフェエコ&システムパック」は繊維として、コーヒー豆のカスは染料として再利用

 再利用によって生まれた衣類(エプロン・Tシャツ)はネスレ日本直営カフェのユニフォームとして利用される

サイゼリヤ

・イタリアの豊かで健康的な食文化を手軽に頼める加かで提供することにより「毎日の暮らしの豊かさ」を実現

・ライフステージに合わせ多様な働き方を提案することで、誰もが生き生きと働き活躍できる場を提供

・産地の契約農家と規格や購入量を決め、野菜は鮮度を重視することで規格外として産地で捨てられる野菜を減らしている

・自社工場で精米した無洗米を店舗へ供給し、とぎ汁による水質汚染を防止している

 上下水処理による二酸化炭素の排出量の削減にもつながっている

・鉄製・アルミ製の食器や調理器具、樹脂製のグラス類を回収してリサイクルに取り組んでいる

 樹脂製グラス類をリサイクルした卓上伝票差しを一部店舗で導入している

ドトールコーヒー

・商品を提供するときには、使い捨てのプラスチック容器は使用せず、陶器・グラスを使用することで、プラスチックゴミを削減

・おしぼり、紙ナプキン、紙袋を世界の森林保全に貢献する「FSC認証」を受けた紙へ変更

・本社がある渋谷駅周辺の美化活動を、近隣住民等と一緒に実施

鈴木コーヒー

・募金型コーヒー「THREE PEACE PROJECT」を推進し、支援を必要とする団体や国に募金・支援活動を行う

・男女ともに働きやすい環境作りなどの活動を行い「ハッピー・パートナー企業(新潟県男女共同参画推進企業)」として登録を受ける

・教育機関との連携や会社見学を促進し、若者が地元で働く機会の増加を図る

・賞味期限が近い、期限切れ商品などの販売を行い、フードロス削減へ積極的に取り組みを実施

SDGsの具体的な取り組みについて紹介

 

企業ごとの取り組みを見てきましたが、一般的にどのような視点を持ってSDGsの目標達成に向けた取り組みができるのか、いくつか紹介していきます。

プラスチックゴミの削減

現在、プラスチックゴミによる海洋汚染が深刻な問題になっています。プラスチックゴミは河川などを流れ、最終的に海へ辿り着きます。

 

このまま海へのプラスチックゴミの流出が続くと、2050年までに海を漂うプラスチックゴミの重量が魚を上回るとも言われています。

 

また、海を汚すだけでなく、そこで暮らす生き物や魚などを食べる人間にも影響を及ぼしています。

 

飲食店ではプラスチックゴミを減らすため、食事を提供する際のお皿や箸、テイクアウトの容器をプラスチック製のものから繰り返し使える素材、木や竹などの素材に変更することができます。

 

環境に配慮してエコ容器やエコカトラリーをお考えの方は、紙製、木製、バイオマスプラスチックなどを取り扱っている『パークマーケット』の商品を一度見てみるのも良いでしょう。

フードロスを減らす

日本国内だけでも、食べられるのに捨てられてしまう食材(フードロス)が年間約522トンあると言われています。

 

そのうち、飲食店からは約16%を占める81万トンのフードロスが発生しているのです。

 

飲食店ではフードロスを削減するために、仕入れや在庫管理の徹底、食べ残した料理を持ち帰れるようにするなどの取り組みが必要になります。

フードシェアリングサービスの活用

まだ十分食べられるが、廃棄予定になっている食品を消費者のニーズとマッチングさせる「フードシェアリングサービス」が注目されています。

 

このサービスを使うと、これまで廃棄していた食材を再利用することができます。

 

急な予約のキャンセルなどで食品が余ったり、味や品質には問題がないが見た目が提供できる条件に合っていないものをフードシェアリングサービスによって、安い価格で消費者へ提供することができるようになります。

 

フードロスを削減するとともに、飲食店の売上げアップや新規顧客の獲得につなげることができるメリットもあります。

フードバンク、こども食堂

「フードバンク」とは、企業や家庭で余った食品を、児童養護施設などの団体、高齢者やひとり親世帯などへ無償で提供する取り組みです。

 

「子ども食堂」は、様々な事業により、家庭で食事をすることが難しい子どもたちに料理の提供を行う取り組みです。

 

飲食店の廃棄商品を活用し、無料〜数百円で食事を提供します。どちらもその日の食事を満足にとれない人を助けることができ、食材の廃棄を減らすことができます。

サステナブル・シーフードの採用

生態系や環境に配慮した漁業で収穫された水産物のことを「サステナブル・シーフード」と呼びます。

 

MSC認証、ASC認証を受けたサステナブル・シーフードを取り入れることで、「海の豊かさを守ろう」という目標達成に貢献することができます。

 

【MSC認証】 
 持続可能な漁業で収穫された天然の水産物に付けられる

【ASC認証】 
 環境に大きな負担を掛けず、労働者と地域社会にも配慮した養殖業

トレーサビリティを意識した食品を取り扱う

トレーサビリティでは、商品の生産から消費までの過程を追跡することができます。

 

最近は、スーパーでもパッケージに生産者の名前や顔が表示された商品を見かけることが増えました。

 

生産者や流通の過程を把握できる仕組みは、関わる人たちの責任が明確になります。これは「つくる責任 つかう責任」の達成につながっていきます。

フェアトレード認証製品

私たちの生活は安くて質の良い商品によって支えられていますが、これらは発展途上国で人件費や原料を安価に抑えることで作られています。

 

現実には、安さを追求するあまり適切な対価が支払われていないこともあります。

 

フェアトレードには「公平・公正な貿易」という意味があり、発展途上国で作られたものや原料を適正な価格で仕入れることが、生産者の労働環境の改善・発展途上国の自立につながります。

従業員の働き方を見直す

飲食業界では、人手不足が深刻な問題となっています。その結果、従業員一人ひとりの業務負担が大きくなり、長時間労働が発生する原因にもなっています。

 

人手不足を解消するためには、セルフ注文・自動精算など業務の効率化や、配膳ロボットなどテクノロジーの活用が挙げられます。

 

それ以外にも、福利厚生の充実や働きやすい環境作りも大切になります。

エコ電力の利用

二酸化炭素の排出量増加による地球温暖化が世界中の問題として、これまでも取り上げられてきました。

 

二酸化炭素を排出する火力発電から太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーを使って発電した電気に変えることで、二酸化炭素の、排出量を減らすことができます。

ジェンダー平等

女性の活躍だけでなく、LGBTといったセクシャルマイノリティへの配慮も必要になります。

 

飲食店ではトイレを男女の区別のほかに、誰が入っても良い場所を作ると気兼ねなく利用できます。

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは

 

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すために、2015年の国際サミットで採択された世界共通の目標のことです。

 

地球上の「誰一人取り残さない」ことを原則として、先進国・発展途上国すべてに17のゴール(目標)と169のターゲットが設定されています。

 

豊かさを追求しながら地球環境を守り、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を、2030年までに達成することを目標としています。

 

目標 内容
1. 貧困をなくそう あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる
2. 飢餓をゼロに 飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3. すべての人に健康と福祉を あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4. 質の高い教育をみんなに 全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
5. ジェンダー平等を実現しよう ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児のエンパワーメントを行う
6. 安全な水とトイレを世界中に 全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
8. 働きがいも経済成長も 包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進およびイノベーションの促進を図る
10. 人や国の不平等をなくそう 国内および各国家間の不平等を是正する
11. 住み続けられるまちづくりを 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する
12. つくる責任 つかう責任 持続可能な消費生産形態を確保する
13. 気候変動に具体的な対策を 気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14. 海の豊かさを守ろう 持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15. 陸の豊かさも守ろう 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16. 平和と公正をすべての人に 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17. パートナーシップで目標を達成しよう 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

 

現在世界では、気候変動、感染症の蔓延、貧困、戦争、エネルギー問題などさまざまな問題が起きています。

 

これから先も地球上で安心して暮らし続けられるように、世界中の国々で話し合いを行い、それぞれの解決方法を考えて目標を立てたのがSDGsというわけです。

 

日本の2022年時点のSDGsの達成・進捗状況は163ヵ国中、19位です。17の目標のうち、日本が達成できているのは「質の高い教育をみんなに」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「 平和と公正をすべての人に」の3つです。

 

他の目標についてはまだ達成されておらず、改善が必要な状況となっています。

なぜ企業はSDGs(エス・ディー・ジーズ)に取り組んでいるのか

 

2030年までに日本の人口は1億1900万人まで減少し、高齢化率が31.2%へ上昇すると言われている一方、世界の人口は増加を続け、2015年と比較して11億7千万人多い85億5千万人に達する見込みです。

 

世界の人口増加に伴い、エネルギーや食料資源需給のひっ迫、地球温暖化など世界規模での環境悪化が懸念されています。

 

そこで、2030年に向けてすべての人々が豊かで平和に暮らし続けられる社会をめざし「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連サミットで採択されました。

 

国だけの取り組みでは目標を達成することは困難であり、民間企業や個人の協力が必要となります。今後社会を支えていくZ世代(15〜25歳)は特に社会問題への関心が高い傾向にあります。

 

地球環境に配慮した商品やサービス活動を好んで購入する若者も増えており、飲食店なども例外ではありません。

 

 企業への投資にもSDGsへの取り組みがどの程度行われているのかなどを、投資家が評価するようになってきており、社会的にSDGsの取り組みに関心が高まっています。

 

今後は、SDGsの取り組みを理解し、飲食店においても実際に行動に移すことが求められます。

まとめ

 

今回紹介した企業のSDGsに関する取り組み以外にも、さまざまな企業や団体で持続可能な社会の実現に向けて活動が行われています。

 

政府や企業任せにせず、私たち一人ひとりが環境や社会問題に関心を持つことが大切です。

 

飲食店としてSDGsに取り組むことで地球規模の問題の解決を図っていくことに加え、企業としての好感度・売上げアップにも繋がるので、是非参考にしてみてください。